透析患者さんは、心血管系危険因子を多く有しており、長期の透析により心血管系疾患が進行していきます。透析患者さんの調査では、心筋梗塞の既往8.0%、うっ血性心不全の既往28.9%、末梢動脈疾患・大動脈瘤の合併5.7%、脳梗塞の既往・一過性脳虚血発作(TIA)の存在15.0%と心血管系疾患の合併が非常に多くなっています。
このように、透析患者さんは、動脈硬化が原因となる循環器疾患を合併する割合が非常に高いのですが、当院では、それらの疾患に関して、早期発見・早期治療を行っています。
320列マルチスライスCTを用いた画像診断を行い、カテーテル治療が必要となった場合には、速やかにカテーテルによる治療を行っています。また、当院で積極的に行っている末消動脈疾患(PAD)の治療に対しては、血管を詰まらす原因の一つである悪玉コレステロールを除去するLDLアフェレーシス療法も行っています。その他の浄化法として、敗血症の方を対象に行うエンドトキシン吸着療法も実施しています。
近年、人工透析療法においては、治療に使用する透析液をより綺麗なものにすることで、透析患者さんへの合併症を低減させ、透析寿命を長くすることが出来ると言われており、国も関連学会から示されている基準に基づいて、2012年度診療報酬改定では「透析液水質確保加算2」を新設しています。
当院もこの基準に適合した、より上質な透析液の使用およびこれを維持するための管理方法によって、現在ではオンラインHDF療法が全ての透析装置で治療可能となっております。オンラインHDF療法とはこれまでの血液透析療法では不十分であった種々の不純物を体内より取り除くことが可能となります。この種々の不純物を取り除くことにより透析患者さん特有の痒みを軽減するという報告がなされています。また、関節痛や痺れの改善にも効果が期待される治療となります。痒みや関節痛、痺れに悩んでおられる透析患者さんは多くいらっしゃると思いますが、このような方の手助けになると考えます。
さらに、当院では下肢のケアにも重点を置き、維持透析中の患者さんに対してフットケアを実施しております。また、半年に1回、定期的にABI(下肢上腕血圧比)測定を行い、患者さんからの下肢の痛みの訴えがあった場合は随時測定を行い、異常の早期発見・早期治療に努めています。
また、維持透析患者さんを対象に、希望があれば自宅から病院までの送迎車も運行しております。患者さん個々のライフスタイルを重視した透析ライフを送って頂けるよう、スタッフ一同でサポート致します。