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64列MDCT

コンピューター断層撮影(CT)は、X線を体の周りを回転させながら照射することで、輪切りの断面写真を撮ることができます。画像診断の主役ですが、従来のCTでは平面画像でしかありません。上半身全体など、広い範囲の撮影には長い息止めが必要ですが、撮影中に血圧や脈拍数が上昇するため、乳幼児や高齢者、重病の人には使いにくいという問題がありました。特に常に動いている心臓は、精密な画像を撮ることは難しいとされていました。
この問題を解決したのが、これまで1列だったX線検出器を複数に配列したマルチスライスCTです。64列の機器では、検出器が1回転する間に最大64枚の画像を撮影することができます。このため従来よりも撮影時間も短く、被爆を軽減することができます。

マルチスライスCTで何がわかるのか?

1mm以下の幅で輪切り画像を多数積み重ねることで、従来では不可能だった縦方向の画像もあらわせるようになりました。あらゆる角度、方向から、臓器が立体的に手に取るように見えます。画面上で臓器を動かし、下や裏側から見ることも可能です。冠動脈、大動脈などの循環器領域は勿論のこと、胃、腸などの消化管や肝臓、胆のう、膵臓などの各臓器、腰椎、頚椎などの骨など全身が撮影可能です。
その中でも特に力を発揮するのが心臓です。今までは、虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症の原因となる冠動脈や足の動脈の動脈硬化を発見するために、直接手足の動脈からカテーテルを入れていくカテーテル検査が当たり前のように行われてきました。しかし最近、新しいCT機器であるマルチスライスCTが開発され、カテーテル検査に代わって、冠動脈や足の動脈の動脈硬化の発見に使われるようになりました。このマルチスライスCTを用いると、普通のCT検査のように、ガントリーとよばれる大きなドーナッツ状の装置の中をゆっくり移動しながら、十数秒ほど息を止めるだけで、冠動脈や足の動脈の異常がわかります。造影剤を使う点では、カテーテル検査と差がありませんが、動脈に針を刺してカテーテルを入れていく必要がなく、手の静脈から点滴をするように造影剤を注入するだけですので、危険性はほとんどなくなりました。撮影時間も10分程度で、検査後も特別な止血操作とか安静時間は必要でなく、外来での待ち時間中に検査を終えてそのまま帰宅できる、という大きなメリットがあります。また、形の異常の発見だけでなく、狭窄部を広げる風船療法やステント留置、バイパス手術の経過をみるのにも最適です。心臓の拍動にあわせた画像にすることも出来ます。

冠動脈造影CTについて

冠動脈は大動脈起始部(心臓から全身に出る血管の付け根)から分枝しており、心臓の筋肉に血液を供給するとても大切な血管です。心臓を取り囲むように冠状に走行しており、左右に2本あります。
右冠動脈は大動脈起始部の右前側から分枝しており、心臓の右側を回り主に心臓の下側を栄養しています。左冠動脈は主幹部と呼ばれる血管から心臓の前側を栄養する前下行枝、後側を栄養する回旋枝に分かれます。主幹部は前下行枝、回旋枝の2本を栄養する非常に重要な部位です。それらの血管から枝が分枝し、心臓の筋肉にくまなく血液を供給しています。

造影剤を注入することにより血管の内側が淡白色に映し出されます。
動脈硬化が進行すると冠動脈内に粥腫(プラーク)が形成され、造影剤と識別が可能であり、それらにより動脈硬化の進行度や血管の狭窄度がわかります。狭窄度はどれほど細くなっているかを数値で表しており、たとえば50%狭窄であれば1/2程度、75%狭窄であれば3/4程度は狭くなっていることを示します。さらに動脈硬化が進行すると石灰が沈着し、その石灰化は造影CTでは真白色に映ります。
下記に具体的な冠動脈造影CTの画像をお示しします。