循環器疾患と治療について

高血圧症

全身に血液を送るためには心臓が送り出す血液にかなりの圧力をかけることになります。この圧力で血管の壁にかかる力を血圧といいます。血圧は1日の間だけでも運動や食事などによる血流量の増加や、ストレスなどの感情の動揺による血管の収縮などで上下します。
なんらかの原因で、血圧の調節機能に障害が起これば、高血圧や低血圧という慢性的な症状を表わすことになります。高血圧とは、最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上の両方、またはどちらかが高い状態をいいさらに次のように分類しています。

分類 収縮期血圧 拡張期血圧
軽症高血圧 140~159 または 90~99
中等症高血圧 160~179 または 100~109
重症高血圧 ≧180 または ≧ 110
収縮期高血圧 ≧140 かつ < 90

軽症、中高症、重症に分かれ、重症度に比例して心臓病や脳血管障害のリスクも高くなります。
高血圧症には、原因となる病気がある「二次性高血圧症」と、原因を特定できない「本態性高血圧症」の2種類があり、日本では本態性高血圧症が9割以上を占めています。注意しなければならないのは、高血圧を放置すると、さまざまな合併症を併発するということです。高血圧は脳卒中、心臓病、腎障害など重大な病気の危険因子になります。
例え症状がなくても、検査などで高血圧を指摘されたら、きちんと治療しなければなりません。

高血圧症の原因

本態性高血圧症では、血圧を上昇させやすい要因は遺伝や加齢、塩分の摂り過ぎ、過度の飲酒、肥満、ストレスなどが考えられます。
一方、二次性高血圧症の原因となる病気で最も多いのは、腎臓の病気で、これらを腎性高血圧といいます。また、腎臓へ行く血管が細くなることで起こる腎血管性高血圧、大動脈炎症候群などや心臓の弁あるいは血管の病気から起こる心臓血管性高血圧もあります。
そのほか、クッシング症候群や褐色細胞腫など内分泌系の病気から起こる内分泌性高血圧、脳血管の病気や脳腫瘍などが原因で起こる神経性高血圧があります。

高血圧症の症状

高血圧症自体の症状は、本人が気づかないことがほとんどです。症状が現れるのは血圧が高くなりはじめた初期段階で、頭痛、めまい、肩こり、手足のしびれ、動悸、耳鳴り、疲れやすいなどです。
この初期症状もしばらく時間がたつと軽くなってくるので本人は安心しがちですが、急に血圧が上昇して激しい頭痛や吐き気、嘔吐が起こることもしばしばあります。
こういった症状が現れてくると、脳梗塞や脳出血、狭心症、心筋梗塞、腎疾患などの病気を起こしやすくなります。

高血圧症の治療

本態性高血圧症では、塩分を控えるなどの食事療法や、肥満を解消するために適度な運動を行なう運動療法などを合わせて行ない、生活習慣を改善する必要があります。それでも血圧に変化がみられない場合は、降圧薬を用います。
高血圧のリスク分類の高リスク群(最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上で、糖尿病、臓器障害、心血管病のいずれかがある)では、ただちに治療を開始する必要があります。
なお、高齢者の場合は、血圧を下げすぎると血流量が低下して、かえって脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす危険性がありますので、降圧目標はやや高めに設定することが多いです。
二次性高血圧症では、原因となっている病気の治療を優先的で行ないます。手術治療できる病気であれば、手術によって高血圧も同時に改善します。