冠動脈が閉塞して心臓の筋肉が壊死を起こすために生じます。50歳以降の男性に多く、死に至ることもある大変危険な病気です。よく原因となるのは、冠動脈硬化症で、高血圧、糖尿病、高脂血症などが冠動脈硬化を引き起こす原因になります。
また、心臓弁膜症や心房細動のある人では、心臓の弁などにできた血栓がとんで流れていき、冠動脈に詰まって心筋梗塞を起こす場合もあります。
ほとんどの場合に胸痛があります。それも、締めつけられるような痛さや、圧迫感などがあり、狭心症の場合よりも長く続きます。通常は1~2時間、場合によっては翌日まで痛みが続きます。
痛みの場所の多くは胸の中央ですが、左寄りで心臓の鼓動を感じる部分や、左胸、左肩、背中、首、左腕、みぞおちなどに感じる場合もあります。脈拍が弱くなったり乱れたりすることが多く、危険な不整脈もあります。
心臓の鼓動や呼吸に関係なく、次第に顔色が悪くなり、手足が冷たく、吐き気や冷や汗を伴い、便意を催すこともよくあります。重症の場合には呼吸困難のために寝ていられず、泡の混じった痰を出して苦しむ肺水腫を起こしたり、意識も混濁してショック状態に陥ることもあります。
心筋の壊死を最小限に食い止め、ショックや心不全に至らないようにするための救急処置が必要になります。
急性期治療では、冠動脈を拡張させるための即効性硝酸薬(ニトログリセリンなど)を服用します。併せて、詰まった血栓を溶かすために血栓溶解薬を静脈注射し、血流再開を促す方法(冠動脈内血栓溶解療法)や経皮的冠動脈形成術などが行われます。
急性期を乗り越えたら、再発防止のために、持続性硝酸薬、β-遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗血小板薬などを用いた治療が行われます。数日間の安静後、ベッドで起き上がったり、椅子に座ったりする軽いリハビリテーションからはじめ、徐々に運動量を増やしていきます。